小笠原岳

Gaku Ogasawara

近所の散歩、
外出先でのスナップなど。
そんな写真を載せながら
日々の出来事などを。

2009.09.04

2009年9月4日  「My children 001」

0909041


「水海道市生涯学習センター」 (1996年竣工)

設計は石本建築事務所。
そう、自分がスタッフとして関わったプロジェクトである。
写真の端に写ってる2両編成の鉄道は電車ではなくディーゼル車、関東鉄道常総線である。
場所は茨城県水海道市。

きょうはお隣のつくば市に用事があったので、せっかく近くまできたのだからと久しぶりに我が子の様子を見てきたのだ。
ひとつひとつのプロジェクトに思い出はあるのだがこの建物は特に思い出が多い。

会社ではまだパソコンがひとりに1台という時代ではなく、インターネットなんでまだ普及していない。
パソコンもWindows9x系ではなくWindows3.xで動かしていた時代。
建築業界ではCADを実務で使い始めようかという黎明期であった。
図面を手書きではなくコンピューターで書く(書く?)なんて・・・(手の方が早いのに・・・と)。
パワーのないパソコンに初期のCADソフト、そしてプリンターではなくペンプロッター・・・。
複雑な図面をRedrawなんかしたらパソコンは30分以上も思考に入ってしまって仕事にならない。
印刷をかけたらかけたで1枚を出力するのにまた30分以上。
仕上がった図面をチェックして間違えがみつかったらまたやり直し・・・。
印刷途中でペンの芯がなくなって交換・・・。
しかも建物は直線基調でなく“R”である・・・。
もうそれはそれは大変な思いをした。

2次元から3次元にする段階でもいろいろあった。
施工のプロセス中になんと市長選が入ってしまったのだ。
今でいうところの、自民党vs民主党のようなもの。そう、「政権交代。」が起きてしまったのだ。
工事は中断し、格好のネタということで当時はゴールデンタイムのNewsにまで取り上げられてしまった。
知らないところでいろいろと喧々諤々があったのだろう。結局、大幅な設計変更を行い、工事再開。
そして写真のような形になってなんとかこの世に生れてくることができた。
たいへんな難産だったのである。

そんな苦労が多かったプロジェクトではあったけれど、人には恵まれた。
政権交替で自分たち以上に苦労されたであろう市役所の担当の方々には昼も夜も可愛がっていただいた。
工事中断にも関わらず明るく現場を取り仕切ってくれたゼネコンの所長、
そして愉快な(?)仲間たち・・・、
みんないい人たちだった。
苦労が多い仕事でも人に恵まれることによってずいぶん救われると思ったものだ。

きのう久しぶりに訪れた水海道市であったが、なんといつのまにか名前が変わっていた。
「水海道市」から「常総市」へ・・・。
建物名称も「常総市生涯学習センター」、と看板が変わっていた。
建物の方は、様々な生涯学習プログラムを学ぶ施設としてたくさんの市民の方々に利用されているようであった。


時を経て自分の仕事を見るのもなかなか楽しい。
さて次はどの子に会えるだろうか。

 
 
内容
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